ADL(えーでぃえる)、IADL(あいえーでぃえる)
ADL(Activities of Daily Living :日常生活動作)
食事、排泄、入浴、整容、衣類の着脱、移動、起きる動作など、生活を送るために必要な動作のことです。
IADL(Instrumental Activities of Daily Living:: 手段的日常生活動作)
買い物、洗濯、掃除、金銭管理、交通機関利用、電話などの対応など、日常生活を送るために必要な動作のうち、ADLよりも、高次で複雑な動作のことです。
私たちは日々、日常生活動作、手段的日常生活動作を繰り返し、健康的な生活を送っています。
あなたのADL.、IADLの状態は大丈夫?
とくに高齢になった方は、定期的にADL、IADLをチェックしましょう。
何ができて、何ができないのか明確にすることが大切です。
ADLの自立度を評価する尺度には、「バーセルインディクス」や「機能的自立度評価法」などが、IADLの尺度として「老健式活動指標」や「手段的日常生活活動尺度」などがあります。
ここでは、厚生労働省作成の生活機能評価を紹介します。
あなたは大丈夫ですか。
介護が必要になった主な原因(平成28年度国民生活基礎調査より)
重力の世界
宇宙飛行士は、なぜ地球に帰還した時すぐ歩けないのか?
無重力の宇宙に行くと重力がなくなり、骨に対する負荷が減ります。すると骨密度は低下しその影響は、骨だけでなく、腱や靭帯にも影響を及ぼします。
私たちは、地球で立つ、座る、歩くなどの動きを重力に逆らってバランスを取りながら体を支え日常生活を送っています。ところが宇宙では、無重力のため、バランスを取る必要がなくなり、それらに関係する機能が低下します。だから重力のある地球に帰還した宇宙飛行士は姿勢が保持できず、すぐに歩くことができません。その代表的な原因の一つに抗重力筋の機能低下があげられます。
抗重力筋って何?
抗重力筋とは、重力の負荷に対して、姿勢を保持するために働く筋肉です。
抗重力筋は、脊柱起立筋や広背筋、腹直筋、大臀筋、大腿四頭筋、下腿三頭筋などがあります。
体の反対の部位に作用しながらバランスをとり、姿勢を支えています。
抗重力筋は加齢や運動不足で衰えやすい筋肉です。
寝たきり状態と廃用症候群
長期臥床や活動低下で二次的な機能低下で廃用症候群がおこります(地球にいながら宇宙で暮らしているような心身への変化が起こるともいえます)。
運動器では、全身の筋力低下、関節への影響、心肺機能の低下、心拍出量の低下や自律神経のバランスのみだれから起立性低血圧が生じやすくなります。
また精神面でも刺激が減少することで意欲低下や抑うつ状態を招くことにつながります。
寝たきりから廃用症候群を予防するために、日々の生活の中で栄養をしっかりとり、体を動かし(関節や筋肉を動かす)、毎日ベッドから離れて生活することや日頃から散歩などの運動習慣を取り入りいれていくことが大事です。
生活の中で体を動かすことが、廃用症候群の予防になります。
ADL・IADLと介護予防について
加齢に伴い筋肉量は低下、重力のある生活で、立つ、座る、動くなどの日常生活を継続させていないと、地球にいて無重力状態、抗重力筋は衰えていきます。
筋肉、関節、骨が衰え、転倒しやすくなり、要支援・要介護状態になってしまいます。
➀私たちの姿勢を支えている抗重力筋が、私たちの生活の自立を支えている
私たちの日々の生活は、食事、排泄、入浴、整容、衣類の着脱、移動、起きるなど生活を送るための動作と買い物、洗濯、掃除、金銭管理、交通機関利用、電話などの対応などで成り立っています。
これらのADLやIADLの行為は、抗重力筋がバランスよく機能しているからこそスムーズにできます。
またこれらの日常生活活動を繰り返すことが、抗重力筋を鍛えていることになります。
➁ADL・IADLにプラスして行なうとより介護予防となるもの
・日常生活活動+バランスの良い食事
・日常生活活動+適度な運動
・日常生活活動+レクリエーション
・日常生活活動+役割や社会とのつながり
★最後にみなさんへメッセージ★
日々の生活の中に、介護予防の知識と技術を取り入れて、誰もが豊かな生活、人生を送れる社会をつくりましょう
八子 久美子(やこ くみこ)
「介護予防概論」担当
日本福祉教育専門学校 介護福祉学科 統括学科長
看護師、社会福祉士、介護支援専門員、高齢者ケアブンネ・メゾット2級
大学病院、訪問看護、介護支援専門員として12年間の現場経験を生かし、現在は介護福祉士の養成教育に携わっている。これからの福祉・介護を支える専門職には、介護予防の視点がより一層求められるため、教育の中で伝えている。自身の活動としては、デイサービスで認知症の方を含む高齢者に対し、ブンネ楽器を活用した介護予防に取り組んでいる。地域で暮らす人々に対して、それぞれのライフコースに応じた介護予防が展開できることを目指している。