【健康寿命と口腔ケア】
平成13年に策定された「健康増進法」に基づき、平成25年度から10年間の計画として定められている「健康日本21(第二次)」の目標の1つとして「健康寿命の延伸」が掲げられています。
この目標を達成するためにも「栄養」「運動」「社会参加」の三本柱が重要といわれています。
口腔機能が低下すると、会話がしにくくなるなどの課題を抱えると同時に、食べにくい食材も増えることから栄養状態が悪化します。
その結果、体力が低下し外出する気力も少なくなり、次第に社会参加もままならなくなってしまいます。
このように健康寿命を考える上で口腔ケアはとても重要なのです。
そこで、今回はオーラルフレイルと歯周病についてお伝えします。
オーラルフレイルとは
「オーラルフレイル」という言葉をご存知ですか?
「フレイル」とは、「身体の衰え」を表す用語で、様々な要因によって健康な状態と要介護状態(日常生活でサポートが必要な状態)の中間を意味します。その中でもお口の働きが弱まってくることを「オーラルフレイル」といいます。
具体的には、
・食べこぼしやすくなった
・噛む力が弱くなった
・むせやすくなった
・滑舌が悪くなった
・口が渇きやすくなった
などの症状から始まります。些細なことなので見逃しやすいのです。
また口腔の機能低下は全身の衰えと関連性が高いので、早めに発見して対応することが大切です。
そこで、オーラルフレイルを簡単にチェックできる問診票をご紹介します。
以下の質問で、合計の点数が3点以上の人は、オーラルフレイルの危険性がありますので、専門的な対応が必要です。
*オーラルフレイルハンドブック第1版(一般社団法人神奈川県歯科医師会作成)より引用
オーラルフレイルの対策(予防・対処)
オーラルフレイルを予防するためには、嚥下能力や咀嚼力などを鍛える必要があります。口腔機能を意識的に鍛えるためにどのようなことができるのか、ご紹介しましょう。
パタカラ体操(噛む力や飲み込む力の維持・向上に効果)
皆さんもご存じのパタカラ体操です。
実は、発音ごとに目的があるのを知っていましたか?
ぜひ、大きな声で、しっかり口を開けて行なってみましょう。
唾液腺マッサージ(唾液分泌の向上)
1回のマッサージでは、1か所あたり5~10回程度のマッサージで十分です。
また、食事の15分前に行なうと食事摂取時に唾液分泌が増して効果的です。
*奈良県健康長寿応援サイトすこやかネットなら より引用
歯周病とは
歯周病は、歯を支えている組織(歯肉や歯を支えている骨など)の病気で、歯肉に炎症が起ったり、歯茎から出血をしたり、歯がグラグラになって抜けたりします。
以前は歯槽膿漏や歯肉炎などと呼ばれていたものの総称で、30歳で約80%の人が罹っているといわれています。自覚症状が出にくくゆっくりと進行するため、気付いたときにはかなり進行しているということも少なくありません。
注目すべきは、歯周病は全身疾患との関連性が高いということです。最近の研究では、歯周病原因菌などの口中細菌と全身疾患(心筋梗塞・脳梗塞・糖尿病・肺炎など)に関連性があるといわれています。例えば、歯周病を発症していない人に対して、脳梗塞の発症確率は2.8倍、糖尿病の発症確率は2倍ともいわれています。
このように歯周病は単に口の中の病気だけでは済まされず、私たちの健康に大きく影響を与えているのです。しかし、正しい対処法を行なうことで、ある程度コントロールできるという特徴も持ち合わせていますので、早めに対処したいものです。
歯周病の対策(予防・対処)は?
まずは歯周病セルフチェックをしてみましょう。
➀歯周病セルフチェック
次の項目で該当するものにチェックしてみましょう
1. 歯茎に赤く腫れた部分がある
2. 口臭がなんとなく気になる
3. 歯茎がやせてきたみたい
4. 歯と歯の間にものがつまりやすい
5. 歯をみがいた後、歯ブラシに血がついたり、すすいだ水に血が混じることがある
6. 歯と歯の間の歯茎が鋭角的な三角形ではなく、うっ血していてブヨブヨしている
7. ときどき歯が浮いたような感じがする
8. 指でさわってみて、少しグラつく歯がある
9. 歯茎から膿み(うみ)が出たことがある
*公益財団法人8020推進財団HPより引用
《判定》
チェックが1~2個
歯周病の可能性があります。歯みがきの仕方を見直し、歯科医院で診てもらいましょう。
チェックが3~5個
初期あるいは中等度歯周炎以上に歯周病が進行しているおそれがあります。早めに歯科医師に相談しましょう。
判定結果はいかがでしたか?
「セルフケア(自分で行なう毎日のケア)」と「プロフェッショナルケア(歯科医院で行なう専門的ケア」の2本柱で、自分の歯と口の健康を守っていきましょう。
セルフケア(自分で行なう毎日のケア)
・歯みがき(ブラッシング、歯間ブラシ、デンタルフロス、洗口液の活用)
・お口の体操
・規則正しい生活習慣(バランスの良い食事をよく噛んで食べるなど)
プロフェッショナルケア(歯科医院で行なう専門的なケア)
・歯石除去
・歯みがき指導
・歯とお口の健康チェック、早期発見・治療
➁セルフケア(正しい歯みがきのポイント)
まずは正しい歯磨きから始めましょう。「正しい歯みがきのポイント」は次の通りです。
毛先をきちんと歯面にあてて磨く
お口の状態に合わせて、スクラッビング法やバス法を使い分けましょう。
毛先を歯面に90度(直角)にあててみがく方法
毛先を歯と歯茎の境目に45度の角度にあててみがく方法
小刻みに動かして丁寧に
1~2本ずつを磨くイメージで1か所20回以上は磨きましょう。
歯垢の付きやすい所(歯と歯の間、歯と歯肉の境目、かみ合せの面)は丁寧に
磨き残しが無いように、磨く順番を決めるのもおすすめです。
軽い力で磨く
歯ブラシの持ち方は、ペングリップ(鉛筆を持つように軽く持つ)で、力を入れすぎない(150~200g程度の圧で)。
歯ブラシの交換の目安は1か月(2~3週間で毛先が広がる場合は少し力を入れ過ぎかも)。
特に就寝前の歯みがきは念入りに
就寝中は唾液分泌も少なくなります。口中の細菌が繁殖しやすくなるので念入りに。
歯間ブラシ、デンタルフロス、洗口液などを上手に併用しよう
歯ブラシでは磨ききれない汚れを効果的に取り除きましょう。
*予防歯科から生まれたクリニカ(ライオン) HP「歯の健康基礎知識 」の「正しい歯の磨き方」より引用
自己流で歯みがきをしている人も多いと思いますが、全身の健康を考える視点からも、今一度自分のブラッシング方法を見直してみましょう。
結構、自己流で行なっている人も多いかもしれませんね。今回ご紹介した正しい歯みがきのポイントを参考に、最初は焦らず 鏡を見ながら練習してみましょう。
また、毎日丁寧に自分でケアをしても、磨ききれない部分があります。そのような汚れは定期的(6か月から1年に1回以上)は歯科医院で綺麗にしてもらうと同時に、歯とお口の健康チェックをしてもらいましょう。
毎日のケアと専門的ケアを上手に取り入れることで、歯とお口の健康を守るのはもちろん、全身の健康維持・増進も手に入れましょう。
*クラブ サンスター HP「生活習慣のコツ」の中の「どうして必要なの?歯の定期クリーニング」より引用
まとめ
美味しく食事を頂き、家族や友人との楽しいおしゃべりなど、日々の暮らしを豊かにするためにも歯とお口の働きは切っても切れない関係です。これからも、歯や口腔環境を整えるように心がけていきましょう。そして、何歳になっても健康で自分らしい人生を謳歌していきたいものですね。
「口腔ケア」担当講師