高齢者がひとたび寝たきりになってしまうと、本人はもちろん、介護する家族も肉体的、精神的に負担が大きくなってしまいます。そうならないために必要なのは、原因を知って予防すること、また予防の知識を持っておくことです。
寝たきりの原因と予防、対策について知識を深めておきましょう。
寝たきりになってしまう原因とは?
寝たきりになってしまう原因には、どんなものがあるのでしょうか。身体的要因と精神的要因に分けてみていきましょう。
身体的な要因
高齢者が寝たきりになってしまう原因のひとつは病気です。生活習慣病、高血圧、脳血管疾患、がんといった病気にかかってしまうと長期間の入院や治療を余儀なくされます。
とくに脳梗塞などの脳血管疾患は、身体に麻痺が残ることもあり、思うように動けない状態になる可能性があります。そのような状況になると、次第にベッドで過ごす時間が長くなってしまう恐れがあります。近年は、がんの完治も不可能ではなくなっていますが、高齢者にとって治療はかなり大きな負担です。治療中は免疫力も大幅に低下してしまうので、軽い風邪から肺炎にまで重症化し、寝たきりのきっかけになってしまうことも。
その他、関節リウマチや骨折などのケガも寝たきりの原因です。これらは治療に時間がかかりますし、痛みやしびれなどから身体を動かすことが億劫になりがちです。
精神的な要因
寝たきりになる原因は、病気やケガだけに留まりません。高齢になると活動する機会が減り、人と接する機会も減少していきます。そうなると脳への刺激がなくなり、認知機能が退化しやすくなってしまうのです。心や脳が健康な状態でなければ、病気やケガをしていなくても、身体に不調をきたす可能性が出てきます。
「病は気から」と言いますが、心と身体は一体であり、心が元気でなければ必然的に身体機能も弱っていきます。
寝たきりを予防するための対策
寝たきりを予防するにはどうすべきでしょうか。日常生活で気を付けたい点について紹介していきます。
座ることを意識する
まずは「寝ている状態=ラクな状態」と思わないことです。1週間寝た状態を続けると、筋力が1~2割低下し、骨量も低下すると言われています。
また関節が固くなる、心肺機能が低下する、噛む力・飲み込む力が低下することも分かっています。座ることで、覚醒レベルをアップさせ、心肺機能・バランス力のアップ、噛む力・飲み込む力のアップなどが期待できます。床ずれの予防や便秘の改善などにもなるので、横になるよりも座るようにしましょう。
栄養をしっかり摂る
介護が必要になってしまう高齢者は低栄養になっている人が多いと言われます。低栄養になっていると、免疫力も下がり感染症になる危険度もアップ。とは言え、高血圧や肥満になってしまう食事はNGです。
バランスの良い食事をするなど、毎日食べるものに気を付けるようにしましょう。
噛む力を衰えさせない
噛むことは脳の活性化につながります。記憶力を衰えさせないためにも、噛む力は大切。認知症の予防のためにも、噛む力が衰えないようにしたいですね。
口や歯のケアを行う
噛む力を維持するには、口腔内のケアが必須です。また、誤嚥性肺炎や病気の予防のためにも、口腔内ケアをしっかり行ないましょう。
適度な運動をする
寝たきり防止には、足腰の筋力もポイント。負担にならない範囲でストレッチをしたり、外に出て散歩をしたりして、身体を動かすようにしてください。
人と会う機会を作る
脳には一定の刺激が必要で、それがないと認知症のリスクが高まったり、免疫力が低下したりすると言われています。そうならないためにも、誰かと会って会話や交流をすることが重要です。デイサービスなどの介護サービスを利用して、仲間やスタッフと交流するのも良いですね。
誰かとの繋がりを実感するだけでも、精神安定に十分貢献し、うつ病などの予防にもなります。
寝たきりの予防に効果的な体操
寝たきりの予防には、足腰の筋力を維持し転倒によるケガを防ぐための体操がおすすめです。無理なく続けられる体操を生活に取り入れ、寝たきりを遠ざけましょう。
片足立ち | 床から5㎝ほど片足を浮かせて立つ方法です。左右それぞれ1分ずつ、1日に3セットほどが理想です。 |
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スクワット | 両足を肩幅に広げて立ち、つま先を30度ほど外側に向けます。お尻を後ろに突き出すようにしながら、ひざをゆっくり曲げます。※ひざは足の先より前に出さないようにします。※ひざの曲がる角度が90度になるくらいまでが目安ですが、無理のない所で止めてOKです。屈伸した後は、ゆっくりとひざを伸ばしながら、元の姿勢に戻します。1セットで5回ほど繰り返しましょう。1日3セットほどが目安ですが、体力に応じて回数にこだわらず続けていくようにしましょう。 |
寝たきりにならないためのリハビリ方法
治療や入院などでベッドの上で過ごす時間が長くなると、どうしても筋力の低下が起こってきます。そのまま放置していると寝たきりにつながるため、リハビリを行なって予防していきます。基本は、できる範囲で身体を動かしていくことです。
ベッドの上でできる体操
足の体操 | ベッドの背もたれを、無理のない位置まで起こし、片足ずつ曲げて(ひざを立てて)胸に近づけます。 |
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腕の体操 | ベッドの背もたれを、無理のない位置まで起こしておきます。両手でフェイスタオル(もしくは細長い筒状のもの・新聞紙など)の両端を持ち、肘を伸ばしたまま、頭上に向けて腕を上げていきます。このように足や腕を動かしたり、手首や足首を回したりするだけで、血流も良くなりますし、気分転換にもなります。 |
このように足や腕を動かしたり、手首や足首を回したりするだけで、血流も良くなりますし、気分転換にもなります。